お母さん、コロコロと意見を変えないでよ!
みなさん、こんにちは。
いつもおやこフリースクールをご利用いただきありがとうございます。
今回は、思春期くらいの子ども達が親に対して望んでいることの一つをご紹介したいと思います。
(当スクールが関わる子どもの中には、このように願っている子どもがいるという事実をお伝えします。)
一貫性を持ってほしい
直接口には出せませんが、「お母さん、コロコロと意見をかえないでよ!」という思いを持っているようです。
一貫性に関しては、母親自身の場合と、両親が足並みが揃わず別々のことを言う場合がありますが、今回は母親自身の一貫性の無さを取り上げてみたいと思います。
母親が一貫性がなく、「今日言っていることと昨日言ったことが違う」とか、「言うこととやることが違う」など、言動・態度や決断がコロコロと変わる場合、子ども達はどれが本当なのか分からなくなってしまい、迷います。
しかし、ほとんどの場合、母親自身は良かれ(やって当然)と思ってやっているので、子どもが迷っていることに気が付いていません。
例えば、昨日は「自分の部屋くらい自分で掃除しなさい」と言っていたのに、今日になったら母親が子供の部屋を勝手に掃除している。
「学校には自分で行きなさい(徒歩・自転車・交通機関などを使って)」と言っておきながら、いざ行こうとすると「お母さんが車で送っていってあげる」と言う。
逆パターンもありますね。
日常生活から宿題や明日の準備、塾や習い事などにおいても同様で、枚挙に暇がありません。
「自分でやりなさい」と言っておきながら、「お母さんがやってあげる」というのは、立派なダブルバインドです。
また、機嫌がコロコロと変わる母親もいて、ついさっきまでは機嫌良くおしゃべりしていたのに、突然怒りだすなど、機嫌に一貫性がない場合も、子ども達は母親の機嫌に左右されることになり、迷います。
母親側の心理
では、言動に一貫性がない母親はどうしてこうなってしまうのかと尋ねてみると、よく訴えるのは、「このままだと心配(かわいそう)だ」とか「状況(外部要因)が変わるんだから、私の方も決断を変えざるをえない」という理由です。
具体的には、子どもが毎日歩いて学校に行くことを頑張っているのに、朝雨が降った日は子どもに直接頼まれてもいないのに学校まで車で送迎するのは、「濡れたらかわいそう(心配)」という気持ちでやっているようです。
また、部屋を勝手に掃除するのは、「お客さんが来ると(外部要因)子どもの部屋が散らかっていたら困る」などの理由のようです。
学校関係でもよく起こりますが、「宿題をやりなさい」と言いつつも、結局先走って手伝ったり、中には全部やってしまうという場合もあります。
これらの一貫性の無さは、母親自身が「かわいそう(心配)」とか「(みんなと違うと)不安」な気持ちに耐えれないことから始まっていて、その結果本人の意思や本来持っている力を無視して、やりすぎてしまっているようです。
そのうえ、外部要因によって自分の決断が変わるというのを肯定するということは、自分の決断よりも外部要因(周囲・世間体)の方が優先されているということです。
つまり、母親自身が常に不安が強く、自分が言った言動に対して「これでいい、大丈夫だ」という確信が持てていないということです。
子ども側の見解
「部屋が散らかっていると困る」のは、筋が通っているようにも見えますが、子どもの部屋が散らかっていて、かつそれを見られたとして困るのは子ども本人です。
宿題にしても、やらなくて困るのは子ども本人です。
本来なら子どもが悩むべき困りごとは子どもが自分の力でしっかりと悩み解決していかなければなりません。(←これを「課題の分離」と言います)
また、そういうときは子どもが成長するチャンスです。
しかし、こういう母親は子どもの困りごとを発生させる前に、自分が「かわいそう」という思いや不安な状況に耐えられなくなってしまい、結果子どもの力を信じて任せることができず、勝手に判断を変えるということになってしまいます。
そして、大抵の場合この方向転換は、子どもに意志を確認するなどのプロセスを踏まずに母親の中だけで進んでいきます。
一般的に見ると、これはただ単に「一方的に約束を破っている」ことになりますね。(外の社会でこれをやったら信頼を失い即アウトです)
大抵の場合こういう母親は責任感があり、「(世間的に)約束を破ってはいけない」という強い正義感を持っています。
しかし、「約束を破っていはいけない」と信じている当の本人が、なぜか子どもとの約束は一番率先して破っているわけです。
この矛盾に気が付きますか?
結果、いつも約束を破られている子どもは「言ったことが違うじゃん。またどうせ次もコロコロ変わるんだろ。じゃ、ちゃんとやるだけ損だな」と考えるようになったとしても、何ら不思議はありません。
これが日常化していくと、大人は違うことを言うし、違うことをやると学習してしまい、人を信用することができなくなってしまいます。
さらに、「約束は破るためにある」と思うようになり、たとえ自分で決めたことでも、それをその通り実行するということができなくなってしまいます。
その結果、いろんなことを諦めて、どんどん無気力になっていき、「自分は何もできないダメな人間だ」「何をやっても無駄だ」と無力感に苦しむことになりかねません。
自分の一貫性を振り返ってみよう
母親側からしてみれば、日常のほんの些細なことで、そんな意図はないかもしれませんが、それらが積み重なった結果、子ども達への影響は計り知れないほど大きなものになってしまう可能性があります。
そして、実際にそんな矛盾だらけの母親に対して、子ども達は「一貫性を持ってほしい」と感じているのです。(←自分ではこんなこと絶対に言えませんが)
お子さんの問題でお困りのお母さんは、勇気がいることとは思いますが、一度ご自身の一貫性について振り返ってみるといいかもしれません。
ご自身や、もしかしたらご自身の母親について、思い当たる節が出てくるかもしれません。
もし、何かしらの間違いに気が付いたときは、正直に認めて修正する、そんな親の柔軟な姿を見ることを、子どもたちは一番望んでいるのかもしれません。