両親は俺のことを1ミリも理解していない
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さて、今回のブログは、平均的なご家庭のお話です。
普通の家庭の優良児A君
A君は、公立の中学校に通う男の子です。
お父さん・お母さん・お姉さん・A君の4人暮らしで、お母さんの実家の近くに家を建てて住んでいます。
勉強はどちらかと言えばできる方で、スポーツも万能という活発なお子さんです。
学校には普通に行けているのですが、小学生の頃からクラスメイトや他の児童と揉めたり、問題を起こして先生に怒られることがあって、親が学校に呼び出されたこともありました。
そして、どんなに問題を起こして先生に怒られても、なかなか自分の非を認めて謝ることができませんでした。
クラスメイトや友達と揉めると、「俺は悪くない、相手が先にやった」と言い、それで先生に諭されても、「俺は悪いことはしていない。やったのは他の奴で、俺はただ見てただけ」と言います。
自分より年下の子に手を出したこともあり、「あいつがうざいから悪い」という始末でした。
それでいて、テストや大きな大会などの本番にはめっきり弱く、ここぞという場でミスや失敗を繰り返してしまい、勉強もスポーツもよくできるのになかなか実力が発揮できないようでした。
はた目には、本番ではソワソワして、落ち着きがなく、テンパっているように見えるのですが、本人は「焦っていない、いつも冷静だ。こんなの簡単だ。全部分かっている」と言います。
「実力があることはよくわかったけど、本番で発揮できないのはとてももったいないね、」という話をしていると、「実は、俺もそう思っていた。でもどうしたらいいのかわからない」と本音の部分が少しずつ出てくるようになりました。
そして、この感覚は幼いころからずっと感じていたとも教えてくれました。
話を聞いていくうちに、彼の言い分にも一理あるな、と感じることもあり、ひょっとしたら過去に理不尽に怒られていたことがあったのかもしれないと思うようになりました。
その話の中で「理不尽に怒る」というキーワードに彼がとても反応していたので、心当たりがあるのかを尋ねてみたら、いろいろあるけど、一番よく理不尽に怒るのは父親だということでした。
A君の父親
A君の父親は、社会的に地位のある方で、地域貢献やボランティア活動にも積極的な人です。
しかし、子どもから見ると、子どもの話を全く聞かない、よく怒る、手をあげる、といったこともあるそうで、二面性を持っている人物のようでした。
自分や家族に対する理想が高く、思い通りの子どもに育てたい、理想的な立派な子どもを育てたいという思いが強いのか、それに反することをした我が子が許せずに、理由も聞かずに頭ごなしに叱ることがあるようでした。
Aくんは、日常の問題行動はもちろんのこと、勉強やスポーツにおいてもミスや失敗をすると怒られていたようです。
A君の母親
A君の母親は、仕事熱心で職場での評価も高い方のようでした。
それを支えていたのは、母親のご実家の存在で、子どもが小さい頃は育児や家事全般のほとんどをおばあちゃんが担っていました。
母親は、職場で自分が高く評価されていることに自負があり、人間関係を上下関係で見るところがありました。
その延長線上で、夫のことはあまりよく思っていなかったようでした。
夫がA君を叱っているときに、母親は「我関せず」といった態度だったようで、A君は「母親は助けてくれない」という気持ちを募らせていたそうです。
そのうえ、A君が何かを話しても全て自分の話(自慢話や苦労話)で返すという具合で、子どもの気持ちを汲むことができない人のようでした。
A君の根っこにあるもの
こんな両親に育てられたA君は、「両親には何を言っても無駄」とすべてをあきらめて、自分のことでも親が決めることに対して何も言わないようになりました。
何も言わなくなったA君は、実は心の深いところで、理不尽に怒られてきた経験と、両親が受け入れてくれない・理解してくれないさみしさが重なって、とても傷ついているのです。
沢山傷付けられてきて、もうこれ以上傷つきたくないという思いから、先に相手を攻撃したり、自分の非が認められなかったのでしょう。
そのうえ、ミスや失敗をすると父親に怒られるという恐怖感もあり、自分のミスや失敗がなかなか認められなかったのかもしれません。
ミスや失敗が怖いから、「ミスしないようにしよう・絶対に失敗できない」という強い思いから、いつも以上に力が入りすぎてしまい、逆に本番で実力が発揮できない状態になっていたのだと想像できます。
実は、A君のように実力を持っているのに、発揮できていない(発揮しないようにしている)子ども達は思いの外たくさんいます。
A君が本当の力を出せるようになるには、まずこの傷ついた心を癒していかなくてはなりません。
ここまで読めば、「両親は俺のことを1ミリも理解してない」と訴えたA君の気持ちが少し理解できるのではないでしょうか。
普通の家族の中に隠された病理
A君は学校にも行けていて、特に深刻な問題を抱えているわけではないように見えますが、このようなケースは、一般的なご家庭の中に本当にたくさん隠れています。
A君の両親は、ごくごく一般的な、仕事と家庭のために頑張っているご夫婦です。
ですが、自分たちの言動が、我が子を傷つけている、追い詰めているなんてまったく気付いていません。
A君のような傷ついている子どもたちが、このまま大人になって、自分の人生を考えたときに初めて壁にぶつかることもよくあることです。
そのまま行くと、正当な自己評価ができないので、被害者意識から他責に走り、家庭内で暴れん坊になる可能性が高いです。(自責傾向が高い場合は、自傷行為からの自殺未遂などを起こすかもしれません。)
そして、暴言・暴力が始まった息子に対して、今度は親が奴隷のようにA君の言いなりになっていくのです。
専門家から見れば、A君の行動にはそこかしこにA君からのSOSが隠されています。
子どもが学校に行っているから、普通に生活できているから、と安心せずに、日頃から子どものことをよく見て、話をきいてあげてほしいと思います。
親が意識するだけでも、大切な我が子のこの先の人生が変わってきます。
親も子も、双方が健やかに成長できることを願っています。