三者関係の壁⁉

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皆さん、こんにちは。
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これといって明確な理由はないけど不登校になってしまったという子どもたちの中には、3人の関係(三者関係)が苦手・築けないという子どもがいます。

これは、大人にも同じことが言えて、長期の引きこもり、仕事や人間関係が続かない人、うつ病や何かしらの精神疾患を抱えている方などにも共通している特徴です。

これらの子ども達は、二者関係は特に問題なく対応することができるのですが、そこに一人加わって三者になった途端に、どう対応していいのか分からなくなってしまいます。

例えば、女の子3人のグループは上手く行かないとか、恋愛においても三角関係とか、3人が関わる関係性が難しいというのは、皆さんも少なからず耳にしたことがあるのではないでしょうか。

実は、学校に行ったり、会社や組織に所属したり、社会に出て人と関わる際のほとんどの関係が三者関係なのです。

なので、三者関係が苦手な人にとっては、社会(学校)はとてもハードルが高い場所になってしまい、その結果、不登校やひきこもりという状態になっていることがあります。

三者関係が築けるようになることは、社会に出るうえで必要なスキルの一つであると思います。

逆に言えば、三者関係が築けるようになると、自然と社会性が身に付き、社会に出る(学校に戻る)準備が整ったということになります。

二者関係と三者関係?

生まれてすぐの子ども(乳児)の世界には、自分と母親しかいません。

そこには父親の存在はほぼなく、母親を独占することができる二者関係になります。

自分と母親は同じ存在だと思っていて、母親は自分と同じことを思い、感じていると思っています(幼児的万能感)。

この時の母親との二者関係は愛着(基本的信頼感)を作る上で必要な関係です。

しかし、成長するにつれて、父親の存在が理解できるようになってくると、自分と母親の世界に父親という第三者が加わって、三者関係ができてきます。

本来、父親という存在は、母子密着を断ち切るナイフのような役割をしており、このナイフが幼児的万能感を打ち砕き、正常な三者関係を構築していくのです。

父親と母親の関係が良好なら(母子密着を断ち切るナイフがきちんと機能していれば)、そこで育つ子どもは、母親が自分だけのものではなく、父親のものであるということを学び、自然と父親を受け入れていきます。

父親と一緒にいる母親が嬉しそう・楽しそう・幸せそうだと感じることで、子どもも父親を味方(仲間・同志)だと認識して、父親と母親との関係を客観的に理解することができます。

母親と二人きりで平面だった二者関係に比べると、父親が加わった三者関係は、立体的になり、空間を生むことができて、客観的な視点を持てるようになり、想像力・フラストレーション(母親が自分のモノにならないという不満)に耐える力・待つ力などを身に付け、社会性やコミュニケーション能力を育てることにつながっていきます。

この三者関係が、子ども達が最初に出会う最少の社会で、そのまま世の中の縮図となります。

家庭内での三者関係がスムーズに構築され、コミュニケーション力と社会性を身に付けることができた子どもたちは、そのまま外の社会に出ても、難なく適応していきます。

三者関係が苦手になってしまうのは両親の不仲が原因⁉

一方で、父親と母親が不仲でいつもケンカばかりしている場合や、母親がDVを受けている場合、父親の存在が弱かったり、父親不在(物理的にも心理的にも)など、父親と母親の関係が良好とは言えない環境下で育つ子どもは、どうでしょうか。

父親と一緒にいる母親が幸せそうと認識できず「母親がかわいそう」と思い込んでしまうと、父親を敵とみなして受け入れることができなくなってしまい、三者関係が構築されないまま、母親との二者関係がずっと続いていくことになります。

そうなると、父親は敵で、母親は自分のもの、自分が幸せにしてあげるという幻想(幼児的万能感)が砕けず、いつまでたっても三者関係が築けないままです。

学校や外の社会でも、客観的な視点が持てず、相手のことが想像できず、自分勝手な思い込みで行動してしまったりします(母親との二者関係が基本にあるので、他の相手も自分と同じ、同じことを思っていると思っている)。

そのうえ、敵か味方か(支配(独占)できるかできないか)という発想でしか人間関係を見られないので、都合の悪い関係はすぐに断ち切り、自分にとって都合の良い二者関係しか保てないので、より一層三者関係を築くのが難しくなってしまいます。

そのまま成長すると?

要するに精神的に幼いままということなのですが、このような特性が集団の中で発露してくるのは早い子では小学生くらいからです。

安定した人間関係を長く続けることができないので、仲良しの友達がコロコロ変わります(そもそも友達という存在がよく分かりません)。

また、他人やモノに執着を見せるようになり、周囲からは「しつこい」などと認識されるようになることもあります。

そのまま成長していくと、徐々に学校などの集団生活が苦痛になり馴染めなくなってきます。もしくは、それらが恋愛関係に発展してしまうと、恋人をコロコロと変えたり、逆に強い独占欲からストーカー気質へと変貌していくこともあります。

人間関係に疲れてくると、家にひきこもるようになり、結果、母親との二者関係を更に深めることになり、ひどい場合は暴力・暴言で母親を支配(独占)していくようになります。

この状態が長く続いてしまうと、最終的に警察か病院のお世話になるような事態になり、そこまで行くと改善するのは相当難しくなってしまいます。

三者関係を築くためには

では、どうすればよいかということですが、大きく分けて方法は二つです。

 夫婦仲をある程度改善する

夫婦関係を改善することができれば、それが一番速いですが、なかなか難しいのが現実だと思います。

少なくとも、子どものことに関しては夫婦で足並みを揃える、子どもの前ではタッグを組んでいる姿を見せる、お互いの愚痴を子どもにこぼさない等、両親が敵同士ではなくて、同じ目的を共有する「同盟関係」くらいの認識を持って、日々子どもと接して下さい。

両親の足並みが揃ってくると、今度は子どもが孤立してきて不満になってきますが、母子ともにそれに耐えることも必要になってきます。

② 子ども自身がフラストレーションに耐える経験をする

夫婦関係がどうしようもないという場合は、子ども自身がフラストレーションに耐える体験をして、幼児的万能感を砕いていかなければなりません。

この体験は本人にとっても苦痛を伴う大変な作業なので、なんとかして逃げようという拒否反応が出ることは免れないので、家族内で行うのは難しく、第三者の介入が必須になってきます。

その第三者は、友達や先輩・先生などの学校関係者でも可能ですが、学校に行っていない場合はそれも難しくなってきて、結果ネットやSNSで危ない人につながりを求めてしまうことにもなりかねません。

最も手っ取り早く安全な第三者は、やはり専門家もしくはフリースクールのような専用の場所だと思います。

おやこ心理相談室では、カップルカウンセリングを通して夫婦関係の改善を図ることもできますし、お子様のカウンセリングもお受けしております。

お子様の定期的なサポートと同時に学校の出席認定を望む場合は、おやこフリースクールもご利用できます。

どちらのご利用でも、安心・安全な場所で三者関係のトレーニングを積んでいくことができ、その先に自発的に外の社会に出ていくという未来が拓けていきます。

専門家を持ってしても、幼児的万能感を打ち砕くことと三者関係の構築には時間がかかりますが、学生の間に、社会に出ていく前にこの課題をクリアしておくことが、子ども達にとって、ひいてはそのご家庭にとってどれだけ重要か理解しているので、どんなに拒否されても根気よく付き合っていきたいと思っています。

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