自我を育てることが問題解決の近道⁉
みなさん、こんにちは。
いつもおやこフリースクールをご利用いただきありがとうございます。
みなさんは”自我“という言葉を聞いたことがありますか?
心理学用語で“自我”とは、理性と欲求のバランスを取る機能のことで、自我が育つというのは、その時々に適切な行動ができるということです。
そもそも、自我は3-4歳ころに形成されると言われています。
この時期は家庭内で過ごすことが多いことから、家庭環境の影響が大きく出てきます。
自我機能の弱い子にとって、学校や集団生活はとても居心地の悪い場所になってしまい、不登校の原因になることも少なくありません。
おやこフリースクールでは、子どもたちと接する時間を通して、 “自我”という観点から得意・不得意を見立てて、「自我を育てること」をスクールの目的の一つに設定しています。
これは、専門家が常駐しているおやこフリースクールだからこそできることだと思います。
学校はもちろん、他のフリースクールでも“自我”を育てることを目的としている場所はありません。(後から自我を育てるのは時間も手間もかかるし、何より難しいからです。)
しかし、自我機能が備わっていないということは、3歳児と同じような精神年齢ということなので、その状態で社会や学校に適応することは実はとても難しく、何より危険なのです。
私たちは、年齢に関わらず人が幸せに生きていくためには、いつかどこかで自我を身に付けることが必要だと考えています。
“自我”に関する書籍や論文は数多くありますが、難しいものが多いので、今回はなるべくかみ砕いて解説したいと思います。(おやこ心理相談室独自の考察を含みます。)
”自我“ってな~に?―エスと超自我―
“自我”という言葉は聞いたことがある人も多いと思いますが、イメージは案外漠然としているのではないでしょうか。
オーストリアの精神分析学者のフロイトによると、人間の心理構造にはエス(本能的欲求)と超自我(理性)の二つがあります。
超自我は、いわば見張り役で、自由気ままなエスを取り締まっているような感じです。
場合により超自我がゆるむと、自由気ままなエスが表に出てきて、本能的な欲求に応えることができます。
エスを表に出すことで、リラックスしたり羽目を外して楽しんだりすることができるので、人はストレスを発散させたり、心をゆるめて甘えを出したりして、日々の疲れを癒しています。
エスはいわば、赤ちゃん役です。
この超自我とエスのバランスがとても重要なのですが、そのバランスを取る役割を担っているのが「自我」です。
自我は、いわば心の交通整理役で、「はい、超自我お願い!はい、今度エスどうぞー!」と二つを整理しているというわけです。
自我が育っているかチェック
自我が育っているかどうかは、超自我とエスのどちらか一方に偏りがあるかどうかで判断できます。
年齢に関わらず、エスが強すぎる人は、適切な我慢ができず、わがままで、自分勝手な一面が強くなり、感情のコントロールができず、いわば赤ちゃんのままというような状態です。
TPOに合わせた行動ができないので集団生活に馴染めず、他人を思いやることができないので対人関係のトラブルなどの問題が発現しやすいです。
逆に超自我が強すぎる人は、我慢ばかりしているので、自分の意志や感情が分からず、相手に合わせてばかりいます。
親や周囲の望む意見や決断をすることは得意ですが、本当に自分のしたいこととなると何一つ決められません。
いつも静かなのに突然キレたりする一面もあり、「あんないい人がこんな事をするなんて」という事件を連想させますね。
すごく仕事ができる人が突然うつ状態になったり、外ではいい人なのに家庭でDVしたり、アルコールやギャンブル依存症、ダメンズコレクターなんかも、超自我が強すぎる反動だったりします。
どちらが強く出るかはその人次第(両方を行ったり来たりすることもある)ですが、いずれにしても精神年齢が3歳くらいで止まっているような状態ですので、自我が育って人格が成長しない限り、健全な社会生活を送ることは難しいと想像されます。
どうして自我が育たなかったのか?
それでは、どうして自我が育たなかったのか?ということですが、簡単に言うと、「我慢ばかりしてきたから」です。
前述したように、自我が育つ適齢期は3-4歳ころです。
その頃から家庭内で親が子どものことを全て指示してコントロールしてきた場合や、全てに関わり手や口を出し過ぎた場合に、子どもは我慢ばかりしてしまい(超自我ばかり育つ)、子供らしさを発揮したり、自分のことを自由に選ぶ(エスを表現する)という体験が不足してしまいます。
一見するとおとなしく従順でいい子が育っているようですが、心の中ではエスを抑えつけたまま超自我ばかりが育ってしまい、自我が育つ隙がなかったのです。
そのまま学校に上がると、学校という場所はそもそも指示しかありませんので、さらにエスを表現する体験ができないまま成長してしまいます。
そのまま行くと、問題行動や人間関係を巡って様々な生きづらさが登場し始めてくるのです。
子どもの時期にしっかりと子供らしくいることは実はとても意味があることなのです。
家庭内で自我の再構築は難しい
自我が育たずに成長してしまうと、家庭内で自我の再構築は大変難しくなってきます。
子どもたちは親の顔色をうかがうスペシャリストになっているので、親の前で本当の自分を表現することなんてできるはずもないのです。(そもそも本当の自分が分かりません。)
自我を鍛えるための声掛けとしては、「どうしたい?」「どう思う?」「どう感じた?」などのオープンクエスチョンが有効です。
おやこフリースクールでは、スクールの方針として、こちらから一切指示はしません。
その代わり、「あなたはどうしたいの?」と問いかけをたくさんします。
自我が育っていない子たちはこの質問をとても嫌がり、答えるのにとても時間がかかりますが、私たちはどれくらいかかっても待ちます。(こういう子どもたちは待ってもらった経験もありません。)
それを積み重ねることで、子どもたちは「ここにいてもいいんだ」という安心を覚え、少しずつ答える時間が短くなっていき、自分のことを表現できるようになっていきます。
その先に、自我の形成と自分らしさの獲得が見えてくるのです。
こんなことを考えながら、日々フリースクールをオープンして、子どもたちと接しています。
お子様の自我の機能が弱いと感じる方は、是非一度おやこフリースクールまたはおやこ心理相談室のご利用をご検討ください。
それなりに時間はかかりますが、自我が育つことが問題解決の一番の近道かもしれません。