増加するひきこもり!?

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皆さん、こんにちは。

いつもおやこ心理相談室をご利用いただき、ありがとうございます。

内閣府は、2023年3月31日、2022年度「こども・若者の意識と生活に関する調査」結果を公表しました。

この結果によると、ひきこもり状態にある人は、15~39歳で2.05%、40~64歳で2.02%おり、全国の数字にあてはめると約146万人と推計されるそうです。

以前に内閣府が行ったひきこもりの調査結果は、15~39歳のひきこもりの推計数は54.1万人(2015年度)で、40~69歳の推計数は61.3万人(2018年度)で、約115.4万人でした(特集2 長期化するひきこもりの実態

過去の推計と比べると、ひきこもりの人数は約30万人増加していることが分かります。それと同時に、ひきこもる年数も伸びているようです。

ひきこもりの原因

令和元年の調査によると、大人のひきこもりの原因で多いのは「退職」、「人間関係がうまくいかなかったこと」、「病気」、「職場になじめなかったこと」などですが、それに比べて子どもの原因は、「不登校」や「受験の失敗」「人間関係」など学校関係が多かったようです。

しかし、大人も子どもも「特にない」や「わからない」「その他」といった回答も同じくらい多いことが見て取れます。

特にこれといった理由はないけど、家から出られないというケースは、実は珍しくありません。

今回は「よくわからないけど、ひきこもりになった」というケースについて、おやこ心理相談室独自の視点から紐解いてみたいと思います。

ひきこもってしまったA君(17歳)

17歳のA君は、お父さんとお母さんと妹の4人家族です。

お父さんは代々続く経営者一族で、お父さんの両親の敷地にA君家族も家を建てて住んでいます。

お父さんもお母さんも地域や学校の行事に積極的に参加していて、近隣でも評判の良いご夫婦です。

しかし、実際はお父さんとお母さんは不仲で家庭内別居状態が長く続いていました。

そんな中、高校進学をきっかけにA君は突然ひきこもるようになりました。

中学校までは毎日学校に通い、友達もいて、部活も頑張っていて、成績もそれなりでした。

そんなA君が、なぜ突然家から出なくなってしまったのでしょうか。

A君は、少し離れた町の高校に進学したのですが、そこには同じ中学からの親しい友達もおらず、新しい人間関係も上手く築けず、スピードの早い授業についていけず、勉強に対する自信も無くし、そのうえ慣れない電車通学で、心身ともに疲れきっていました。

しかもそのタイミングで、両親がついに離婚を切り出したのです。

本来、子どもの疲れを癒し、安心を充電するはずの家庭(A君の家庭は長いこと機能不全でしたが)も崩壊の危機に陥って、順調そうに見えた高校進学は、実はA君からすべてを奪っていたのです。

学校でも問題を起こすようになり、そのままA君は高校を中退して、それ以来自分の部屋にひきこもるようになりました。

これだけでもA君がひきこもる理由は十分整っていますが、次はこの状況を母親サイドから見てみましょう。

母親の心境

A君のお母さんは、旦那さんと結婚して以来ずっと旦那さんの家業を手伝ってきました。家も旦那さんの両親と近く、毎日顔を合わせています。

ずっと旦那さんの家族に尽くしてきたとも言えるでしょう。

これまでも夫婦仲は不仲でしたが、ここにきて、旦那さんが突然離婚を切り出してきたのです。

仕事も家事も全て旦那さんの家族に頼ってきたお母さんにとって、離婚して家を出るという選択は、何よりお母さん自身の自立を意味します。

子どもを連れて家を出るか、このままここに住み続けるか、という選択の中で迷っている時に、息子が部屋にひきこもるようになりました。

その時、「このまま息子が家にいてくれれば、息子の世話を口実に家から出なくてもいい。私にはここにいる権利ができる。自立しなくてもいい。」という母親の利害と、学校に行きたくない息子の利害が見事に一致したのです。

しかし、一見するとお互いの利害が一致しているように見えますが、もっと深い無意識のところでは、A君はお母さんの本音を感じ取っていて、家から出ないことで自分が母親の盾となり、母親を守ろうとしていたのです。

A君がひきこもる一番の理由が、本当は「母親が自立できていないこと」でした。

ここでいう「自立」とは、経済的な自立ももちろんですが、それよりも「精神的な自立」を意味しています。

精神的な自立とは、簡単にいうと「自分を大切にすること」、「無理をしないこと」、「自分の気持ちにウソをつかないこと」、「自分の気持ちに素直になれること」です。

きっと、A君のお母さんは、旦那さんとそのご家族の手前、世間体ばかりを気にして、無理して自分を(夫婦関係も)取り繕って、自分の気持ちを押し殺して、我慢ばかりしてきたのでしょう。

A君のひきこもりをケアするためには、このことに気付くことが必要だったのです。

ひきこもりの背景はとても複雑

A君のケースのように、ひきこもる背景には様々な事情が複雑に絡み合っていることが多く、大抵のひきこもりの当事者には、心優しい一面があり、心に傷を負っています。

それを長い間放置しているうちに、その傷が、妬みや嫉み、恨み、憎しみなどの負の感情へと変化していくことも少なくありません。

一旦、負の感情へと変化してしまうと、社会復帰するのはとても難しくなってしまいます。

これは、調査対象になっていない小中学校の不登校の子ども達にも同じことが言えます。

ひきこもりの人数は年々増加しており、年数も伸びているという事実をどう受け止めるか。

社会全体で考えていくべき大変深刻な問題だと思います。

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