学校と家庭の役割の違い:完璧さと曖昧さ
皆さん、こんにちは。
いつもおやこ心理スクールのブログをご利用いただき、ありがとうございます。
今回の記事は、前回の続きになります。(「学校と家庭の役割は違うものである必要がある」参照)
家庭の役割とは?
- あなたのお子さんにとって、「家庭」が存在する一番の理由は何ですか?
- あなたの「家庭」があなたのお子さんに最も教えたいことは何ですか?
これらの質問について、1つだけ確認していただきたいのは、「家庭」の答えは、「学校」の答えとは違うものである必要があるということでしたね。
では、おやこ心理スクールが考える家庭の役割について解説していきたいと思います。
- あなたのお子さんにとって、「家庭」が存在する一番の理由は何ですか?
子どもたちにとっての「家庭」とは、本来は「エネルギーの充電場所」です。
学校が様々な学習をする場所であるとするならば、そこで頑張るためのエネルギーをどこかで充電しなければなりません。
それが家庭の一番の役割だと思います。
エネルギーはどうやって充電できるかというと、安心してゆっくりと休むことです。
学校が「頑張る」場所であるならば、家庭は本来なら「休む」場所である必要があると思います。
休むことができないまま頑張り続けることはできません。
いつかどこかで、エネルギー不足を起こして行き詰ってしまいますね。
不登校の子どもの多くに当てはまるのが、このエネルギー不足です。
では、次の質問にまいります。
- あなたの「家庭」があなたのお子さんに最も教えたいことは何ですか?
これも様々な答えがあると思いますが、おやこ心理スクールとしての答えは、ずばり「曖昧さ」です。
曖昧さとは、「曖昧耐性」とも言い、簡単に言うと、「曖昧さに耐える力」「物事をそのままにしておく力」「白黒つけない力」のことで、私たちはそれを「宙ぶらりん力」とも呼んでいます。(「宙ぶらりん力」参照)
これは、「完璧さ」の対極にある考え方です。
学校が「完璧さ」を教えてくれるのに対して、本来は家庭がこの「曖昧さ」を教えていかなければなりません。
なぜ曖昧さが必要?
学校では白黒つくことが多い(努力が評価される)のに対して、社会に出るとほとんどのことがグレーに一変してしまうからです。
家事や育児においては、頑張りが評価されるとは限りませんし、仕事や人間関係においても、常に努力が報われるとも限りません。
ほぼグレーの社会において、完璧さだけを求めていくと必ずどこかで苦しくなってしまいます。
これは、親御さんにも思い当たる経験がある方がいらっしゃると思います。
曖昧さが身についている子どもは?
「曖昧さを教える」と聞くと、「なんでも適当で、努力しない子」になるようなイメージを持たれるかもしれませんが、この曖昧さを幼いうちから家庭で教えていくと子どもたちはこんな風に育ちます。
- 必要以上に物事や勝ち負けにこだわらなくなり、自分を追い詰めすぎず、肩の力が抜けるようになる。
- いつも落ち着いていて、安定している。
- 物事にこだわらないので、誰とでも仲良くできて、トラブルに巻き込まれることもない。
- 「頑張る」と「休む」の切り替えがうまいので、いつものんびりしているように見えてもやるときはしっかりやるので、周囲から信頼される。
- 塾などに行かなくても、勉強ができたりもするので、先生からも一目置かれるような存在になる。
不登校になってしまう子どもたちの中には、物事にこだわりすぎたり、自分を追い詰めすぎたりと、白黒発想で完璧を求める傾向が強い子がいます。(発達障害やHSCなどの特性により、生まれつきピュアすぎる子もいます。)
家でも学校でも、言われたことを真面目に「完璧」に追い続けてきたのです。
こういう子どもたちがラクになるためにも、「曖昧さ」という概念が重要なのです。
どうやって曖昧さを身につけるのか?
曖昧さを教えるのはとても簡単で、学校とは逆のことをする(言う)だけです。
- 学校では勉強をするので、家では勉強以外のことをしたらいい。
- 家で宿題はやらなくてもいい。
- リラックスしてゆっくり休もう。
- 好きなことをどんどんやればいい。
- (究極は)学校にいかなくてもいい。
大事なのは、指示ではなく選択:子どもに選ばせることです。(大人がやることを決めつけてしまっては、学校と同じになってしまって意味がありません。)
しかし、多くのお母さんたちは、子どもに曖昧さを教えることに抵抗を感じてしまいます。
これは、母親自身が学校でも家でも「完璧」を求められて育ってきたため、ある意味当然のこととも言えるかもしれません。
「宿題をやらなくてもいいなんて、本当にそうなりそうで、絶対に言えない!」というお母さんも多いです。(←しかし、心から「やらなくてもいい」と言えるお母さんのもとでは、自分から宿題をやる子が育ちます。これがパラドックスです。)
不登校のお子さんのお母さんは、「学校にいかなくてもいい」とはなかなか言えません。
そんな時でも、これだけは言えるようになって欲しい言葉があります。
曖昧さを身に着けるための魔法の言葉は「まぁ、いっか」です。
お子さんが何かにこだわっているときは、「まぁ、いっか」と言って、親子でそれを手放す練習をしましょう。
ここまで読んでみて、いかがだったでしょうか。
「ちゃんと宿題をしなさい!」
「忘れ物をしちゃだめ!」
「もっとしっかりしなさい!」
どれもよく聞くフレーズですが、日ごろから「つい子どもに言ってしまう」という経験があるかもしれません。
「学校でも完璧を求められて、家でもさらに厳しく完璧を求められる」ということが子どもたちにどのような影響を与えるか、想像できましたか。
ご自分の家庭の役割が学校の役割と混同していないか、どちらかに偏りすぎていないか、一度振り返ってみるといいかもしれません。(お父さんとお母さんでバランスが取れて機能している場合もあります。)
おやこ心理スクールは、学校でも家でも教えられてこなかった「曖昧さ」の獲得を目指す場所でもあります。
日ごろから「曖昧さ」を意識して、子どもたちや親御さんたちと接しています。
「曖昧さ」を意識することで起きるおやこ関係の変化を体感してほしいと思います。