一家の平和を望む子ども②:スケープゴート・ロストチャイルド
前回に引き続き、家族内における子どもの役割についてご紹介していきます。
前回は「ファミリーヒーロー」について解説しましたが、今回は「スケープゴート」と「ロストチャイルド」についてです。
これらの役割は、特に機能不全家族の元に育った子ども達に多く見られます。
機能不全家族とは、例えば、夫婦仲が悪く、情緒的なつながりに欠けるような仮面夫婦であったり、飲酒をしては突然理由もなく怒りだし、妻や子どもに暴言を吐き、時には手を挙げたりなど、常に家の中には、「次は何が起きるんだろう?」という緊張感や緊迫感があるような家庭です。
この様な家庭では、子どもは、必死で家族崩壊を防ごうとするわけです。
そのために、子どもはこれから解説するような様々な役割を自ら演じていくことになります。
スケープゴート
これは日本語で「犠牲のやぎ」という意味ですが、このタイプは、ファミリーヒーローのちょうど反対の役割を担っています。
病気やケガを繰り返したり、問題を起こして学校に呼び出されたり、近所の子の親が怒鳴り込んできたりと、何かと騒ぎを起こすのはいつもこの子です。
いわゆるトラブルメーカーでもあるわけです。
家族たちは、「この子さえいなければうちは平和なのに」と思うのですが、実はその逆で、このタイプの子が問題を一身に背負ってくれているおかげで、家族の崩壊が防がれているのです。
この子の非行問題で家族が頭を悩ませている間、家族はバラバラにならずにすみます。そこでこの子は、頑張って悪さをしているわけですね。
ヒーローが頑張って秀でていようとするのと表裏一体の心理が働いているのです。
彼らの多くは、「大声で叫べば誰かが自分に気づく。自分に必要なものは取れ!誰も何もくれない」という信念に支配されているので、問題を起こすことで必死に自分の存在をアピールします。
しかし、悪いことばかりではなく、このタイプは、とても勇気があったり、本質を見抜く能力が極めて高いなど長所もあります。それもそのはず、彼らは常に周囲が自分に本気で接しているか、そうでないかを直感で感じているからです。
そういう意味では、彼らが大人になった時、非常に優れた相談者になることもあるのです。
ロストチャイルド
これは日本語で「いない子」という意味ですが、このタイプは、ヒーローやスケープゴードのように注目を浴びる子どもたちの陰にひっそりと隠れている子です。
目立たず、とにかく静かで文字通り「忘れ去られた子ども」なのです。
家族がいっしょに何かをやろうという時にもいない。はじめのうちはいたかと思っても、フッとどこかへ行ってしまう。
そしていなくなったことも気づかれないという存在です。いるのかいないのか分からない存在感の薄い子なんですね。
こうした役割を取ることで、自分が受けるべき注目や愛を他人にまわして家族に安心を与えるのが、この子の役割なのです。
また、家族内の人間関係から離れることで、自分の心が傷つかないようにもしています。
彼らの多くは、「自分はそんなに重要ではないし、自分に出来ることは何もない。感情的に家族のゴタゴタに巻き込まれなければ、自分は痛みを感じないで済む」という信念を抱いています。
次回は、残りの2タイプについて解説をしていきます。