アメリカ発の新しい概念:人一倍敏感な子ども“HSC”
皆さん、こんにちは。
昨今、よく目にしたり、耳にしたりする言葉の一つに「HSC」もしくは「HSP」というものがあります。
これは、
HSC =Highly Sensitive Child (人一倍敏感な子ども)
HSP =Highly Sensitive Person(人一倍敏感な人) という意味です。
「HSC・HSP」は、どちらも2002年にアメリカの心理学者エイレン・アーロン氏が提唱した言葉で、「HSC」は「感覚や人の気持ちにとても敏感で、傷つきやすい子ども」と定義されました。
「HSP」は、その大人版ということです。
アメリカでも5人に1人はこの性質を持っていると言われるほど、実は多くの人が持っている気質です。
「HSC」であることは、病気でも障害でもありませんし、何一つネガティブなことではありませんが、HSCの特性が元となり、自己肯定感を保つことが難しいという側面があります。
「HSC」の正しい理解と対応が得られないままだと、その先に、強いこだわり、潔癖症、強迫性、恐怖症、不安症ひいては不登校などの二次障害を引き起こすことも多く考えられます。
実際、これらの二次障害を抱えて当相談室にお越しになられる相談者様の中にも、「HSC」が根っこにあるケースは少なくありません。
今回は2回に渡り、HSCの子ども達の理解と対応の仕方について考えてみたいと思います。
「HSC」が持つ4つの特徴
アーロン氏は、「HSC」は4つの特徴を持っていて、これらはHSCほとんどすべての人に当てはまると言っています。
① 深く考える
1を聞いて、10を考えます。
周りの空気を敏感に察知して、先々のことや色々な可能性を考えるので、決断や行動に時間がかかることがあります。
また、ミスや間違い・失敗を恐れ、慎重になる傾向もあります。
② 五感への刺激に敏感
暑さや寒さ、湿気や乾燥などの環境の変化に弱く、痛みを感じやすかったり、薬がききやすいという側面があります。
音や臭い、肌触りにも敏感で、服やバッグや敷物など、肌に触れるものの素材の中でもチクチクする物やゴワゴワする物、プラスチック素材などが苦手です。
また、人が多い所、うるさい場所では強い刺激を受けやすいので、本人にとって楽しい場所でもすぐに疲れてしまいます。
例え楽しく通えていても、人が多く集まる学校等は「とても疲れる場所」ということが想像できると思います。
③ 共感力が強い
自分とは関係のない場面でも、強く感情移入してしまいます。
テレビや映画、ニュースなどを見たり、絵本や物語を読んでは、自分事のように喜んだり、悲しんだり、涙したりできます。
他の子が怒られているのを見て、自分も怒られている気持ちになったり、他人がケンカしているのを見て、怖くなったり、ショックを受けたりします。
④ 変化に気付く
相手の表情や顔色、声や目線などから、その人の機嫌が良いか、悪いかを察知できます。
他人の髪型や服装、メイクやアクセサリーから、香水や洗剤の臭いなどの変化にも気が付きます。
また、部屋や教室などの環境の変化にもすぐに気が付きます。
「HSC」の子どもを育てるということ
「HSC」の特徴は、赤ちゃんの頃から表れていることがあります。
一概には言えませんが、よく泣く子、カンの強い子、なかなか眠らない子、眠ったと思ったらすぐ目が覚める子、母親の動きをしっかりと目で追う子、周囲の空気を読む子、母親が大変な時はおとなしくしている子、などはHSCの可能性があります。
「HSC」の子どもを育てるお母さん達は、人一倍子どものことをよく見て、配慮して、お世話をしてきたことと思います。
確かに、「HSC」の子ども達は人一倍手がかかります。
一般的な子育てのやり方が「HSC」の子どもにとっては逆効果になる場合もあります。
子どもに寄り添う対応をすることを、周囲から「過保護だ」とか「甘やかせすぎだ」などと誤解され、自分の子育てに自信を失い、どうしていいかわからなくなり、投げ出したくなることもあったと思います。
そんな中で、これまで必死に子どもを育ててこられたお母さんたちの努力とご苦労に本当に頭が下がる想いでいっぱいです。
「HSC」は先天性の性質だということが分かっていて、親から遺伝している可能性もあると言われています。
だからこそ、「HSC」の子どもを持つ親自身もHSPである可能性が高いのです。(全てではありません)
人一倍敏感な親が人一倍敏感な子どもを育てるということは、想像しただけでも、本当に苦労の連続だったろうと思います。(敏感でない親の下で育ったHSCの子ども達の苦労も計り知れませんが。)
他人と同じようにできないこと、子どものことを理解できないことで自分を責めた経験があったかもしれません。
また、ご自分の特性が理解できずに、悩んだり、苦しんだり、生きづらさを感じたことがあったかもしれません。
ご自身が「HSP」であろうとなかろうと、「HSC」の子ども達がその先の人生を幸せに過ごすためにも、まず親御さんがしっかりと今までの苦労を受け入れられる必要があると思います。
そのうえで、子どもの特性を把握して、より自分らしく健康に、肩の力を抜いて、すっきりとした気持ちで子育てに臨めるようになるといいなと思います。
HSC/HSPの性質をよく理解して、子どものこと、ご自分のことを一度振り返ってみるといいかもしれません。
次回は、「HSC/HSP」の具体的な対応について考えてみます。
参考文献:「ひといちばい敏感な子」エイレン・N・アーロン著
「HSCの子育てハッピーアドバイス」 明橋 大二