失敗を繰り返す子の心にある”恐怖”
皆さん、こんにちは。
小学校のお子さんを持つ親御さんに比較的多い訴えの中に、「うちの子は、本当にだらしがなくって・・・」というものがあります。
身の回りのことや片づけをしない、忘れ物が多い、宿題をやらない、肝心な時にしっかりしない、気弱で、意気地がないなど様々な意味合いのだらしなさがありますが、今回は、実力はあるのに肝心な時に必ずヘマをしてしまうお子さんの例を挙げながら解説していきたいと思います。
肝心な時にヘマをするA君
小学校5年生のA君は、体つきもしっかりしていて、運動も勉強もよくできる男子生徒です。
足も速いので、運動会のリレーの選手に選ばれることもありました。
でも肝心のところで、手元がくるいバトンを落としてしまい、結果的に彼のクラスは負けてしまいました。
また、少年野球の試合でも似たようなことがあり、練習の時には実力を発揮できているのに、いざ試合になると、チャンスの時に、さっぱり打てなく、空振りばかりの結果になってしまうのでした。
学校の試験の時もそうです。いざ本番になると、どういうわけか不安になってきて、緊張してしまうために、出来るはずの問題もできなくなってしまうのです。
そんなことを繰り返していると、クラスメートからも「あいつはだらしがないヤツだ!肝心な時にみんなの期待を裏切る」という声が上がってきました。
家ではどうかというと、肝心な時に力を発揮できないA君に対し、父親からは「おまえは本当にだらしがないなあ。肝心なところでどうして頑張れないんだ!男がそんなにだらしなくてどうするんだ!」と言われてしまうのです。
どうしてA君はそんなふうになってしまったのか?
A君の場合、彼の父親にその原因があったのです。
実は、父親自身が、「いざというときに失敗したら大変だ!ミスを犯したらどうする?」という不安が強い性格だったのです。
試験当日になるとA君に向かって「おまえ本当に大丈夫だろうな!しっかりしろ!」と、普段の様子とはガラッと変わって怖い顔をして脅すのです。
運動会当日も、「おまえ、失敗したら大変だぞ!」と発破をかけます。
父親は激励のつもりで言っているんですが、A君にとっては脅しでしかありません。「おまえが失敗したら、お父さんは絶対に許してあげないぞ!」という恐怖心をA君に植え込んでしまっているわけです。
知らず知らずのうちに、こうした父親の叱責や怒りが、A君の心に傷をつけていたのです。
いざ本番とか、肝心な場面になると、この父親に植え込まれた恐怖が動き出してくるために、「今度こそ、しっかりやらなきゃ!」と意気込みすぎてしまい、結果的に自分から自滅してしまうのです。
A君が本当の実力を発揮するには
A君が本当に実力を発揮して、みんなの期待に応え、自立した少年になるためには、まず、A君の心の中にある、父親からくわえられた脅かし、叱責による心の傷をいやしていかなければいけません。
心が癒されることで、A君がまた自信を取り戻し、ファイトを燃やして、難関を乗り切る、そういう勇気を身に着けなければいけないのです。
だらしない子と言われている中に、意外にA君のような心の傷を負っているケースも少なくありません。
早い段階でA君の心が癒されないと、「どうせ俺は何やってもダメだから・・・失敗するんだったらやらない方がマシだ」というとても偏った考え方が出来上がってしまいます。
また、できればA君の父親自身も、自分の行動や言動が知らず知らずのうちに、A君を追い詰め、苦しめているということに気が付いて欲しいものです。